はじめての簿記(第3回)

今回は貸借対照表について学んでいきましょう。

 

はじめての簿記(第1回)のQ6を復習しておく。

 

貸借対照表とは、

 

「所有している財産の一覧及びその金額」と、「その財産をどうやって手に入れたのかということ(たとえば、人から借金して手に入れたとか、自分で稼ぎ出して手に入れたとか)と、その方法で手に入れた金額」を示す書類である。

 

たとえば、100円玉を1枚持っているとする。そうすると、「所有している財産の一覧及びその金額」は、「現金で100円」ということだ。

 

この100円は、友人から借りたものだとする。そうすると、「その財産をどうやって手に入れたのかということと、その方法で手に入れた金額」は、「借金で100円」ということだ。

 

このように、前者と後者は(その定義からして当たり前に)同じ金額になる。

つまり、バランスするので、英語ではBalance Sheet(バランスシート)という。略してB/Sという。

どうして「貸借」という言葉を使うのかは、まあそういうものだと思ってください。

 

これも図解していきたいのだが、損益計算書の比べると、ちょっとイメージが湧きにくいと思われるので、抽象的に説明するので、まずは理論的な理解をしていってほしい。

 

まず、「所有している財産の一覧及びその金額」についてである。

 

これは、ようするに財産目録ということである。

 

全財産〇円、みたいな言い方をたまにする(かもしれない)が、それのことである。

 

全財産を差し出せ!と強盗に迫られた場合、あなたは何を差し出せばいいのだろうか。

 

私の場合で考えてみる。

 

まず、普通預金口座に残高が(多少)あるので、それ。

それから、財形貯蓄(財形貯蓄が何か分からない場合は、貯金用の別の口座を持っていると思ってもらえればよい。)もしているので、その残高。

また、投資信託もしているので、その投資金額(強盗に渡すには現金化しなければならないが)。

あと、財布にいくらか現金が入っていたので、それ。

最後に、家財道具一式(冷蔵庫とか、洗濯機とかそういうの。まあもう10年くらい使っているので価値はなさそうだが)。

 

こんなところだろうか。自宅は賃貸なので、私の財産ではない。土地も持っていない。

 

ということで、「所有している財産の一覧及びその金額」はこれで一覧にできた。

 

つぎに、「その財産をどうやって手に入れたのかということ(たとえば、人から借金して手に入れたとか、自分で稼ぎ出して手に入れたとか)と、その方法で手に入れた金額」を考える。

 

あなたの財産一覧は、2種類に分けることができる。

 

あなた自身のものか、そうでないかだ。

 

ぜったいにこのどちらかに分けられる。例外はない。

 

というか、「Aであるか、Aでないかのいずれかである」という命題は、(当たり前だが)Aに何が入ろうとも、ぜったいに正しいトートロジーである。(論理式でいうと、 A⋁¬A となる。分からない人はスルーで可)

 

したがって、あなたの財産は、あなた自身のものであるか、あなた自身のものでないか、ぜったいにこのいずれかである。

 

つまり、貸借対照表とは、

 

「所有している財産の一覧及びその金額」と、「その財産をどうやって手に入れたのかということ(たとえば、人から借金して手に入れたとか、自分で稼ぎ出して手に入れたとか)と、その方法で手に入れた金額」を示す書類

 

であるというのは、

 

〇あなたの財産一覧

〇その財産のうちどれだけがあなた自身のもので、

〇どれだけがあなた自身のものでないか

 

を示した書類である、という意味である。

 

図解すると、つぎのようになる。

 

貸借対照表の図解

これを、会計用語では、このように呼ぶ。

貸借対照表(専門用語ver)

ここまでの話から、

 

あなたの財産=そのうち、あなた自身のものでないもの+あなた自身のもの

資産=負債+純資産

 

という計算式が成り立つことが分かる

これを、「バランスする」といい、だから貸借対照表は英語でバランスシートと呼ばれる。

 

じっさいの例で確かめてみよう。

 

(例)

① 会社設立にあたって、自分の財布から100円を資本金とすることにし、会社用の財布に100円玉を入れた。

② 銀行から150円を借り入れ(借金)し、会社の口座に150円が振り込まれた。

 

①の取引によって、あなたの会社は100円を得た。つまり、100円の資産(財産)が発生したことになる。

 

したがって、図の「資産」に100円が発生する。そしてこの資産は「現金」という形態なので、「現金 100円」と書いておく。

 

つぎに考えるのは、「資産」に入った「現金 100円」は、「負債」または「純資産」のいずれなのか、ということである。

 

こういう具体的な話は市販テキストを使ってでも勉強してもらえればいいのだが、答えは「純資産」である。

資本金というのはようするに株主(今回は社長であるあなた)からの出資金なわけで、株主のお金であり、会社からすると負債なのではないかという気がするかもしれないが、株主になるということは、会社の所有権を得るということなので、その対価として支払われた資本金は、会社自身のものである、という理解でよいと思う。

 

したがって、図の「純資産」に「資本金 100円」が入る。

 

これで、

 

資産100円=負債0円+純資産100円

 

となり、左右がバランスしている。

 

つづいて②の取引によって、あなたの会社は150円を得た。つまり、150円の資産(財産)が発生したことになる。

 

したがって、図の「資産」に150円が発生する。そしてこの資産は「預金」という形態なので、「預金 150円」と書いておく。

 

つぎに考えるのは、「資産」に入った「預金 150円」は、「負債」または「純資産」のいずれなのか、ということである。

 

これは簡単で、銀行からの借金(会計では、借入金という言い方をしたりする)なので、あなたの会社自身のものではない。

 

したがって、図の「負債」に「借入金 150円」が入る。

 

これで、

 

資産150円=負債150円+純資産0円

 

となり、左右がバランスする。

 

会社は(個人事業主も)1年に1回貸借対照表を作る。

たとえば1月1日~12月31日という区切り方で1年を区切った場合、12月31日が終わる時点での貸借対照表を作成する。

 

この1年の取引が①と②だけだったとすると、これで12月31日時点での貸借対照表が完成である。

 

①と②を合体させると、図のようになる。

取引の内容を反映した貸借対照表

このように、左右がバランスしている。(ふつう現金を預金より上に書くので、右側の数字と順序が逆になっている。まあどうでもよい。)

 

これが貸借対照表だ。

 

あなたの会社は、

 

〇いま250円の資産を持っていて、その内訳は現金100円、預金150円である。

〇そのうち、150円は負債で、100円は純資産である。負債の150円とは借入金で、純資産の100円とは資本金である。

 

ということを説明している。

 

損益計算書と違って、「現金」や「預金」といった現物(リアル)を表しているということがよく分かるだろう。

 

「資産」という現物(リアル)を、「負債」「純資産」で説明しているというイメージを持ってもらえればよい。

 

これで損益計算書貸借対照表について基本的な理解ができた。

 

しかしまだ、この2つがどう関連するのか(そう、関連するのである)を説明していない。

 

次回は、損益計算書という概念(フィクション)と、貸借対照表という現物(リアル)がどのように統一的に説明できるのか、まさに「複式」簿記と言われるゆえんを学んでいくことにしよう。

 

お読みいただきありがとうございました。