はじめての簿記(第1回)

はじめての簿記第1回ということで、簿記をいっさい知らなった私に家庭教師をする気持ちでやっていきましょう。

 

(Q1)

簿記とはなにか。

(A1)

帳簿に記入することである。

 

(Q2)

なぜ帳簿に記入するのか。

(A2)

帳簿をつくるためである。

 

(Q3)

帳簿とはなにか。

(A3)

決算書を作る基となるものである。日々発生するいろんな取引(何か買ったとか、売ったとか)を忘れないようにメモしているイメージ。

 

(Q4)

決算書とはなにか。

(A4)

決算書とは、貸借対照表損益計算書である。(ほかにもあるが簿記によってつくるのはこのふたつなので、ほかは無視してよい。興味があれば学べばよい)

 

(Q5)

損益計算書とはなにか。

そして、なぜA4では貸借対照表を先に書いたのに損益計算書から説明するのか。

(A5)

損益計算書とは、どれくらい儲かったかを示す書類である。益(profit)と損(loss)を示すので、英語ではProfit & Loss Statementという。略してP/Lという。

 

なぜ貸借対照表を先に書いたのかというと、決算書を並べる場合、ふつう貸借対照表損益計算書の順で並べるからだ(慣習なのかな?理由はあるのかもしれない)。説明としては、損益計算書のほうがイメージしやすいと思うからそうしただけ。

 

(Q6)

貸借対照表とはなにか。

(A6)

「所有している財産の一覧及びその金額」と、「その財産をどうやって手に入れたのかということ(たとえば、人から借金して手に入れたとか、自分で稼ぎ出して手に入れたとか)と、その方法で手に入れた金額」を示す書類である。

 

たとえば、100円玉を1枚持っているとする。そうすると、「所有している財産の一覧及びその金額」は、「現金で100円」ということだ。

 

この100円は、友人から借りたものだとする。そうすると、「その財産をどうやって手に入れたのかということと、その方法で手に入れた金額」は、「借金で100円」ということだ。

 

このように、前者と後者は(その定義からして当たり前に)同じ金額になる。

つまり、バランスするので、英語ではBalance Sheet(バランスシート)という。略してB/Sという。

どうして「貸借」という言葉を使うのかは、まあそういうものだと思ってください。

 

(Q7)

けっきょく簿記ってなに?

(A7)

たとえばその会社がどんな会社なのか、ということを知りたいと思ったら、どういったことを知りたいか?

 

1. まず、いくら売上げがあって、いくら費用がかかっていて、どれくらい儲けが出て 

 いるのかということが気になる。

2. それから、どれくらい借金があるのかも気になる。また、来月、従業員に給料を払 

 えるだけの現金とか預金があるのかも気になる。

3. 会社のオフィスの建物は、会社の所有物なのか、賃貸なのか。その建物が建ってい

 る土地は所有物なのか、借り物なのか。

4. 今回はわりと儲けがたくさん出ていたようだが、その原因は何なのか。売上げが爆

 増したからか、費用が激減したからか、たまたま持っていた土地を売って、それが高 

 く売れたからか、はたまたどこぞの大富豪からとつぜん多額の寄附を受けたからか。

 

とまあ、適当に書いてもこういうふうにいろいろ気になることがある。もちろん、社長の人柄とか、従業員の性格の傾向とか、そういったソフトなこともその会社がどんな会社かを決める重要な要素であることは間違いないが、それでも、上に挙げたような数字で測ることができる要素も、たくさんの情報を与えてくれる。

 

上にあげた1~4のなかには、いろいろな(簿記っぽい)ワードが出てきた。売上げ、費用、儲け、借金、土地、建物など。

これらのワードは2つに分類することができる。

 

それは、概念(フィクション)なのか、現物(リアル)なのかということだ。

 

どういうことか?

 

たとえば1には、「売上げ」、「費用」、「儲け」というワードが出てきた。あなたがその会社の社長に、「御社の売上げ、費用、儲けを確認したいので、このテーブルに持ってきてほしい」と依頼したとしよう。

 

おそらく、社長は困惑するはずだ。

 

あなたは、「いや、たとえばレジとか金庫とかに入っている、今月の売上げ代金を持ってきてくれればいいのだ」と思うかもしれない。

 

しかしそれは、売上げ代金という、あくまで現金という現物(リアル)である。「売上げ」というものをここに持ってくることはできない。概念(フィクション)とはこういう意味である。

 

「費用」や「儲け」も同じことである。取引先から仕入れた商品や、(しつこいようだか)レジや金庫に入っている儲けたお金は、あくまで「商品」、「現金」という現物(リアル)であって、「費用」「儲け」そのものではない。

 

いっぽう3には、「土地」「建物」というワードが出てくる。

あなたはまた社長に、「御社の土地と建物を確認したいので、このテーブルに持ってきてほしい」と依頼したとしよう。

 

社長は、さすがにテーブルに持ってくることはできないだろうが、「土地」や「建物」に案内し、見せてくれるだろう。

 

あなたは、その土地や建物をその目で見ることができ、その手で触れることができる。これが現物(リアル)だ。「現金」や「商品」もそうである。

 

ちなみに「預金」自体は見えないし触れないので概念(フィクション)なのか、という鋭すぎる指摘には、私は窮するほかない。まあ(ふつうは)すぐに現金化できるので、ほぼ現金ということで現物(リアル)ということにさせていただきたい(通帳とか見えるし触れるし)。

 

つまり、私たちがその会社がどんな会社なのかを会計的に説明しようとする場合、その説明は、概念(フィクション)と現物(リアル)という2種類の情報によって構成されているということだ。

 

概念(フィクション)とは、たとえば「売上げ」「費用」「儲け」

現物(リアル)とは、たとえば「土地」「建物」「現金」「預金」「商品」

 

Q5とQ6をもう一度読み返してもらいたい。

これで分かっただろう。

 

概念(フィクション)を示す書類が損益計算書(P/L)

現物(リアル)を示す書類が貸借対照表(B/S)

 

なのである。

 

つまり、P/LとB/Sから構成される決算書とは、その会社がどんな会社であるかを、概念(フィクション)と、現物(リアル)という、2つの側面から説明する書類なのである。

 

この決算書を作るために帳簿を作る必要があり、そのために帳簿に記入する必要があり、その(一連の)行為を簿記というわけである。

 

したがって、簿記の目的は、決算書(P/LとB/S)をつくることなのである。

この決算書によって、会社(など)は業績を発表したり、投資家(など)は投資先の会社を見極めたりすることができ(たりす)る。

 

次回は、具体的にどのような作業を行うのかを学んでいこう。

今回学んだ抽象的な内容を理解しておくことが、具体に落とし込む際に深い理解と納得に資すること請け合いだ。

 

今回はここまでです。お読みいただきありがとうございました。