簿記とは、Wikipediaによると、以下のとおりである。
簿記(ぼき、英語: bookkeeping)とは、企業などの経済主体が経済取引によりもたらされる資産・負債・純資産の増減を管理し、併せて一定期間内の収益及び費用を記録することである。より平易な言い方をすると「お金やものの出入りを記録するための方法」である
わたしは以前簿記を使う仕事をしていたので、簿記については(国際企業みたいな複雑な取引は別として)実務に耐えうるレベルには習得していると思う(もしかすると実務に耐えていなかったのかもしれないが)。
しかし、私はその仕事に就くまで、いっさい簿記など知らなったし、内定が出たあと、簿記の学習をしておくように、というお触れが人事からなされたものの、まったくやる気が出ずせっかく買ったテキストを1ページも読まず入社日を迎えた。
入社後すぐ、簿記の実力テストが行われた。私は100点満点中3点で、全国の同期のなかで最低点数だった。
3点とかのやつ社会人なめてんじゃねーぞ、的な、講師陣からのかましにビビりつつ、研修で簿記の学習が始まったのだが、まったく理解できなかった。
市販の有名なテキストが教材だったが、3級テキストの最初の数ページを何度読み返しても、さっぱりイメージが湧かず、具体的な仕訳の勉強を始めても、自分がいま何をしているのかさえ分からない。
雰囲気で回答を埋め、研修の試験はかろうじて合格したというありさまだった。
何せ、研修後現場に配属されたあと、先輩に分からないことを教えてもらっていたなかで、「現金100円 / 売上100円」の仕訳が理解できていなかったことが発覚して先輩にあきれられたくらいだ。どうやって試験に合格したのか分からない。
現場に配属され、嫌でも簿記を理解しなければならなくなって、実務の上で試行錯誤しながらだんだん理解を深めていき、1年くらいで実務上困ることはなくなった。
それからしばらくして久しぶりに、研修当時使っていたテキストを読み返してみると、やっと最初の数ページが言いたいことが理解できた。
そして読み返しながら思ったのは、市販のテキストは、まったくの初学者には向いていないのではないかということだ。
難しすぎるということではない。とても丁寧に、平易な言葉で書こうとしている努力は伝わる。暗記のコツとかも書いてあって、とっつきやすさは醸し出されている。
しかし、テキストの最初の数ページで初学者が理解する必要があるのは、簿記とはそもそも何で、何を目指して行うものなのか、という、抽象的なグランドデザインだと思う。
それが理解できていなければ、たんに頻出仕訳を暗記していく作業になり、面白くもなければ理解も深まらない。
具体的な学習は、抽象的な理解をバックグラウンドに持っていなければ、効果が薄い。
その観点から見れば、私が使っていた市販のテキストは、まったく合格点に達していない。実務経験を積んだ今読み返して、想像力をフル回転させてやっと、まあこういうことが伝えたいのかな、と推測できるレベルだ。
もちろん、簿記とは何か、目的は何か、といったことも書かれている。しかし、説明が足りていない。どうしてこれで学習をスタートできると思ったのか、不思議でならない。
もちろん、市販のテキストは、深い(とは言っても別に私も学者みたいに理解しているわけではない)理解をするためではなく、簿記検定に合格することが目的だから、たんに点がとれるようになればよいという方針で執筆されているとも考えられる。
そういった勉強に耐えられる人は(嫌味でなく)根性があるのだと思う。むしろ、私の同期はだいたいそのテキストで検定に合格していたので、私に根性がなかっただけだともいえる。
しかし、私のように、たんなる作業的な勉強にはまったく身が入らないという人のほうが多数派だと思う。
最初にもう少し違った導入がなされていれば、根性ではなく、私ももっとスムーズに楽しく簿記の勉強ができたのではないか。
それはじっさい、実務経験を積んだ後、もっとレベルの高い簿記を学ぶ機会が与えられたときにも感じた。
そのときの簿記の講師は大学教授で、テキストも市販のテキストなどではない、もっと「ちゃんとした」やつだった。
その講義の冒頭で、教授は、「今さら言うまでもありませんが、簿記の基本についていちおう簡単に説明しておきます」と言って、少し話をしてくれた。
その内容は、当時の私はすでに理解している内容ではあったが、まさに初回の講義にふさわしい内容であった。これをあのときに聞いていれば、、、と思ったものだ。
ということで、私が過去に戻って簿記をまったく知らなかった当時の私に家庭教師をするとしたら、どういうふうに教えるか、というコンセプトで「はじめての簿記」シリーズを書いていきたいと思う。
長くなったので次の記事で。