消費税の修正申告があったとき、税抜経理と税込経理で法人税への影響時期が異なるのはなぜか

 たとえば、消費税の計算において、課否判定を誤っており、修正申告を行う場合を考えてみたい。(仕訳は税抜経理の場合)

 

(間違った仕訳)

左側勘定:費用:100 仮払消費税:10

右側勘定:Cash:110

 

(正しい仕訳)

左側勘定:費用:110

右側勘定:Cash:110

 

 つまり、ある費用を消費税の課税対象であると判断し、仕入税額控除を行ったが、実は課税対象ではなく、仕入税額控除が否認される場合だ。

 

 よって、消費税の修正申告によって10の税額が発生する。

 ここまでは税抜経理であっても、税込経理であっても、変わらない。

 

 しかし、消費税額が変動するということは、当然法人税の課税関係にも影響を与えるので、法人税の所得の金額が増減することになるのだが、この法人税へ影響させる時期が、税抜経理と税込経理とで異なるとされているのである。

 

 つぎに引用する国税庁の法令解釈通達「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」を、この事例にひきつけて説明すれば、法人税の所得の金額への影響は、税抜経理の場合にはこの取引があった事業年度で、税込経理の場合には修正申告書を提出した日の属する事業年度で、それぞれ受け入れるということになる。

 

(仮払消費税等及び仮受消費税等の清算

6 法人が消費税等の経理処理について税抜経理方式を適用している場合において、消費税法第37条第1項*1の規定の適用を受けたこと等により、同法第19条第1項*2に規定する課税期間の終了の時における仮受消費税等の金額(特定課税仕入れの消費税等の経理金額を含む。)から仮払消費税等の金額(特定課税仕入れの消費税等の経理金額を含み、控除対象外消費税額等に相当する金額を除く。)を控除した金額と当該課税期間に係る納付すべき消費税等の額又は還付を受ける消費税等の額とに差額が生じたときは、当該差額については、当該課税期間を含む事業年度において益金の額又は損金の額に算入するものとする。(平9年課法2-1、平27年課法2-8により改正)

 

(注) 特定課税仕入れの消費税等の経理金額とは、5の2*3のただし書により、特定課税仕入れの取引に係る消費税等の額に相当する額として経理した金額をいう。

 

(消費税等の損金算入の時期)

7 法人税の課税所得金額の計算に当たり、税込経理方式を適用している法人が納付すべき消費税等は、納税申告書に記載された税額については当該納税申告書が提出された日の属する事業年度の損金の額に算入し、更正又は決定に係る税額については当該更正又は決定があった日の属する事業年度の損金の額に算入する。ただし、当該法人が申告期限未到来の当該納税申告書に記載すべき消費税等の額を損金経理により未払金に計上したときの当該金額については、当該損金経理をした事業年度の損金の額に算入する。(平9年課法2-1により改正)

 

(消費税等の益金算入の時期)

8 法人税の課税所得金額の計算に当たり、税込経理方式を適用している法人が還付を受ける消費税等は、納税申告書に記載された税額については当該納税申告書が提出された日の属する事業年度の益金の額に算入し、更正に係る税額については当該更正があった日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、当該法人が当該還付を受ける消費税等の額を収益の額として未収入金に計上したときの当該金額については、当該収益に計上した事業年度の益金の額に算入する。(平9年課法2-1により改正)

 

 この違いはどう説明されるのだろうか。

 

 法人税においては、益金の額の算入時期については権利確定主義に、損金の額の算入時期については、消費税が2号原価とは考えにくいので、3号経費として債務確定基準に従う。

 今回の事例を考えてみると、税込経理の場合、修正申告書を提出した日が、10の追加税額の債務が確定した日であると考えれば、この日が属する事業年度において損金の額に算入するということは理解できる。

 しかし、それをいうなら、税抜経理の場合であっても、損金または益金の債務または権利が確定したのも、修正申告書を提出した日であるというべきなのではないかという疑問が生じる。

 この点について、つぎのように説明したい。

 

 税抜経理の場合、今回の事例だと、つぎのような修正仕訳を行うことになる。

 

(修正仕訳)

左側勘定:費用:110 

右側勘定:費用:100 仮払(未払)消費税:10

 

 この修正仕訳の結果、費用が10増加しており、これが損金の額に算入される。税込経理の場合と損金の額に算入される金額は10で同じであるが、この10は、税込経理の場合には消費税額であったのに対し、税抜経理の場合は、費用なのである。

 

 この費用が債務確定したのはいつか?

 

 もちろん、この取引があった事業年度である。

 

 以上で、税抜経理の場合と税込経理の場合とで法人税への影響時期が異なることを説明できた(と思う)。

*1:中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例

*2:課税期間

*3:特定課税仕入れに係る消費税等の額